「顎関節(アゴ)は物を噛み砕いて咀嚼することにあるのですが、
言語を作り出すところでもあり、
また顎関節の運動によって
脳の血液循環が良くなることにもつながる」と言います。

医学博士 加藤征治著「おもしろ解剖学読本」
顎関節(アゴ)-意志の象徴 ((株)金芳堂1991年)より引用

 

顎(-アゴ-)

障害、健常などに関わり無く「ことば」の不自由な子供たちの多くに顎関節の 正常な動きに必要な咀嚼筋の機能低下などが見られます。

1. 顎(アゴ)の動きが悪いと
咀嚼筋(咬筋.側頭筋.内側,外側翼突筋)が上手く働かない

すると、顎ズレを起こしやすくなります。ことばの障害を持つお子さんはこの症状が見られますが、正しい発声が困難になります。

2. 顎(アゴ)の動きが悪いと
咀嚼筋(咬筋.側頭筋.内側,外側翼突筋)が上手に働かない

すると、アゴと連動している舌を動かす筋肉(舌筋)の動きも悪くなり、舌を使用して発音する「さしすせそ.たちつてと.にぬねの.らりるれろ」などの音がハッキリしないため本人は正しく発音しているつもりなのですが、まちがった音になり相手に言葉が伝わらな状況になります。

例) 「さかな」を「たかな」、「たいこ」を「たいと」と発音するなど
これらは習慣的に誤って発音してしまうのではなく、
舌が上手く働かない現象です。

またことばの障害を持つお子さんの親御さんからよく聞く話ですが 食べ物をよく噛まず丸呑みしてしまうので咀嚼力を強くするために「するめ」を噛ませているが適当に口の中で転がして飲み込んでしまう、と言います。私たち健常者でも、虫歯や歯肉炎等で左右均一に食べ物を噛んでいる人は少ないように思います。言葉の不自由な子供たちは口をしっかり開けることが苦手なこともありますので、歯ブラシのかけ方は良いとは言えません。自ずと虫歯や歯肉炎にかかりやすくなるので左か右のどちらかで物を噛む“片噛み”になり、当然のことながら疲れも早く、よく噛まないまま飲み込んでしまうので消化不良を起こしやすい、噛みあわせが悪く左右均一に噛めない場合は無理やり固いものを噛ませることは好ましくありません。

 

気をつけましょう!!

1. ひらがなの学習について

当教室では、文字書きが初めてというお子さんには、マーカーペンで繰り返しなぞり書きが出来るカードを使い、手を添えて一緒になぞり書きから練習をしています。
そのときに、注意したいことは、

『絵』から発音させるのではなく、まず文字を発音して認識させ、それから名詞を発音するようにします。

「いぬの」「うしの」「うさぎの」「うまの」と教えると、それが『正しい言い方』だと勘違いして、何を話すにもその調子で表現する子供たちを多く見受けます。
当教室へ尋ねて来る親御さんの中に、「子供が13歳になっても全て『馬の』という表現になり、いくら注意しても直りません。結局いつまで経っても話し方が上達しないので何とか直したい。」という方が多くいます。現在、数人その表現を改善する為にトレーニングをしていますが、大きくなるとなかなか改善は難しいようです。

医学博士・加藤征治先生(解剖学)は、
まず  1)  文字を見せて
       2)  発音させて
       3)  書く
この方法が文字を覚える一番の早道と言います。

言葉が不自由な子供たちには「ひらがなの文字書きは(特に50音)言葉が出てからでなければ早すぎる」と言われていますが、「ことば」と「ひらがなの学習」は別に考えるべきと思います。
当教室へ通う児童の9割近くが、「言葉が出なければ文字の学習はまだ早い」と言われてきています。親御さんの中には、それならせめて名前ぐらい書けるようにしたい。と自宅で教えた方もいます。しかし50音の文字書きを教え始めると、かなりのスピードで覚え、同時に言葉が多く出るようになって、学習能力の高い児童が多く見られます。文字の学習が無ければ教えられた単語だけしか言えません。

ペンを持つことを嫌がるような時は、筆から初め、ペンを持つことに慣れさせてあげましょう。それでも嫌がるような時は、時期尚早と考えるようにしています。ぜひ、試してください。

2. 舌を強くするための訓練について

言葉が不自由な子供たちは殆ど(100%近い)舌が上手く動きません。
『硬直』『丸まって奥へ入ってしまう』『タテ、ヨコ、ナナメに動いてしまう』『上あごにくっついて下がらない』などさまざまです。
よって、『さ行、た行、な行、ら行』などの発音が正しく出ないために、他の音に変わってしまいます。
当教室を尋ねてくる親御さんの多くが、「改善方法と思い、舌で上唇の上のほうをなめさせたり、上アゴに“海苔やウエハース”などを貼り付け、舌でそれを取るようなことを行ってきたが言葉は改善されず、下アゴが前に出てしまった。」と言います。

<機能解剖学的見地から>
舌で上唇(それもできるだけ上)をなめる行動は、下顎の運動である。
同時に、舌の筋、とくに舌内筋のほか、舌骨上筋群が常に使われている。
以上のことより、日常生活の咀嚼を含めた単なる口の開閉とはかなり異なる使用(訓練)から、
顎関節への影響(つまり下顎の前突状態)は否定できない。
その可能性は、機能解剖学的にも推察される。

皆さん!一度舌で上唇の上のほうをなめてみてください!
よほど気をつけないと、下あごが前に出てしまいますよね?
下アゴが前に出る『くせ』もしくはその形の筋肉がつきます。よって受け口になり発音不明瞭になります。舌は、顎(あご・咀嚼筋=そしゃくきん)が強くなると正常に働くようになります。早いお子さんは、1ヶ月〜2ヶ月で改善されています。
(顎を強くしようと、するめ等の硬いものを噛ませている親御さんがいますが、その時は奥歯だけでなく前後左右均一に噛ませることをお勧めします。しかし物に依存しなくても顎は強化できます。)